画像処理あれこれ
コラム:よい空で撮るメリット

国内では乗鞍、海外ではオーストラリアやハワイで撮影した作品は、素晴らしいコントラストで我々を魅了します。
でも、日本の都心でもオーストラリアでも星の光の強さ自体はそれほど変わらないはず…。
実際に冷却CCDで、都会の真ん中で撮影されている方が多数いらっしゃいます。それも素晴らしいクオリティです。光害地でも撮れるならわざわざ暗い空の下に遠征に行くメリットはない!?

図A: 国内の山岳地(比較的暗い)。これを基準とする 図B: 図Aと同条件で光害地で撮影した場合。バック濃度が上がりすぎ、高輝度部が飽和してしまっている
空のクオリティの違いは、バック濃度に大きく現れます。どのくらいのバック濃度になるか?それがよい空と悪い空の違いです。

国内のそこそこ暗い観測地で撮影したデータを図Aとします。露出時間は仮に60分とします。
これと同じ対象を全く同じシステム、フィルムで光害地で撮ったとしたら、図Bのようになってしまいます。

同じ露出なので、対象(星雲)そのものの光の量は同じですが、光害によってバック濃度が持ち上がってしまい、星雲の最も輝度が高い部分がフィルムの感度限界を超え、飽和してしまいます。

図C: 光害地で露出時間を短くした。飽和しなくなったが対象(星雲)の肉ノリが弱い
飽和による色飛びを避けるためには、露出時間を短くするしかありません(図C)
しかし、露出時間が短いため、星雲自体の光の蓄積が少なくなり、肉ノリの悪い写真になってしまいます。
フラットフレームを引いたところで、星雲のデータを示す“赤い山”は、高低差がない、すなわちコントラストの低い画像にしかなりません。これを無理に画像処理で“山”を高く持ち上げても、階調のない、のっぺりとしたザラザラの作品になってしまいます。
そこで、都内で冷却CCDを撮っている方々は、同じカットを何十枚も撮って、それらを合成して積み重ねることで星雲のデータ量を確保しているのです。ただし、露出1分のカットを60枚合成するより、60分のカットを1枚のクオリティははるかに上なので、より多くの枚数を重ねなければなりません。
露出をかけたくてもかけられない、それが光害地での撮影のジレンマなのです。

図D: 無光害地で図Aと同じ露出時間で撮影。対象(星雲)部分のデータ量は図Aと同じだが、バック濃度が低いため、全体的に露出アンダーになってしまった。フィルムの性能を活かし切れてないことになる。 図E: 無光害地ではバック濃度を上げても輝度が飽和しないため、露出を引っ張れるのがメリットだ。コントラストも高く、肉ノリのいい原板。
では、オーストラリアのような理想的な空で、まったく同じ60分の露出を行うとどうなるでしょうか。

実は、図Dのように露出アンダーになってしまいます。バック濃度が足りないので、スキャン時にシャドウ部を無理に引き出さねばならず、スキャナのオイシイところを使えないのです。散光星雲のピーク値も低く、フィルムの能力も活かし切れてないといえるでしょう。

そこで露出を90分なり120分なり多めにかけます。すると、バック濃度もそこそこあがってスキャンしやすい原板になります。
しかも露出が増えた分、星雲そのものの光がより多くフィルムに蓄えられるため、フィルムのダイナミックレンジを広く使って記録された(図E)、階調の豊かな素晴らしい作品が得られるのです。

バック濃度が日本と同じ程度になるまで露出をかけると、当然周辺減光が目立ってきます。よって、バック濃度がそこそこあがりつつも、星雲にタップリと階調を割り振れる露出が適正となります。
要するに“暗い空では露出時間を伸ばせる=星雲にたくさんの階調を与えられる”ということにほかならないのです。

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