一眼デジカメあれこれ
(注)各トピックの内容は執筆当時のものです。デジカメ関係は進化が早く、現時点では内容が適当でない場合や古すぎる場合があるのでご注意ください。

おもなトピック
2006年
 Nikon D80インプレッション
 皆既日食の画像処理
 皆既日食を一眼デジで撮る
2005年
 Nikon D50インプレッション
 ステラナビゲータで事前準備
 雑感:20DaとKiss Digital N
 D70用リモートコントローラ
2004年
 ホワイトバランスとは?
 IR改造デジカメ vs ノーマルデジカメ
 デジカメでダークを引く
 フィルタによる青ハロ低減効果

日食における無振動露出(20090522)
現在、星ナビの連載「星界一〜」のページは、いつもの直焦点ネタではなく、日食ネタを執筆している。日本や中国という近場で見られるということもあり、今回は特に初めて日食にいく人も多い。
自分はアストロアーツ・日通の「中国・武漢一泊二日コース」に帯同し、僭越ながらインストラクティングをさせていただくことになっている。もしご一緒する方がいらっしゃったら、ぜひ気軽に声をかけていただきたい。

さて、日食の撮影となると、コロナの全景写真をメインとしたいという人が多い。基本的な撮影方法については、3年前の記事だが、このページの「皆既日食を一眼デジで撮る」が参考になるだろう。筆者のまわりを見るとFS60CとBORG 77EDIIが人気のようだ。ただ、77EDIIはバックオーダー状態ですで日食までの入手は不可能だそうだ。
6月号(5/4売り)にも書いたが、日食の直焦点撮影で気をつけなければならないのはブレである。強度・剛性に期待できない遠征機材は思ったより振動に弱い。2006年のエジプト日食では、APS-Cの小さなミラーとシャッターでも簡単にブレてしまった。もちろん全弾ブレブレということはないが、次回は歩留まりをあげていきたい。
最も有効は方法は振動の発生源、すなわちミラーショックを抑える方法だ。現在、いろいろな一眼デジタルカメラが発売されているが、ミラーアップ撮影ができる機種こそ日食向きと断言できる。特にライブビューが搭載されているカメラはライブビューモードになれば強制的にミラーが跳ね上がるため、ミラーアップ撮影ができる機種も多い。EOSシリーズでは、40D, 50D, 5DmarkIIが該当する。これらの機種はシャッターチャージとミラーで別々のモーターを用いている。つまり、ミラーアップしたままシャッターチャージができる。
もちろん露出終了時に後幕が走り、シャッターチャージが行われるため、完全な無音・無振動ではないが、露出前はまったく無振動になので後幕の振動が撮影に影響を及ぼすことはない。後幕のチャージに比べて遥かに大きな振動を作るミラーショックがないことは大きなメリットだ。

Kiss系もライブビュー中はミラーアップするが、シャッターチャージとミラーのモーターを兼用しているため、シャッター毎にミラーが一瞬下りていまい、ミラーショックが発生する。

話は変わるが、星ナビ6月号に載せたダイヤモンドリングの写真について。
記事の内容は「ダイヤモンドリングは刻一刻と表情が変化するので、オートに任せて露出したほうがいい」と書き、エジプト日食の作例を載せた。このとき使った測光方法はカメラのデフォルト値(?)である「評価測光」である。
右の写真は評価測光、露出補正-2EVで撮影したダイヤモンドリング。ブラケティングで3段階に分けた露光のうちの最もアンダーなコマだ。結果は、露出オーバーではないギリギリといったところ。ということは3段階の他の2枚は完全に露出オーバーなのであった。次回は-2EVを上限に撮影してみる予定だ。
測光方式は評価測光がベストというわけではないが、自分は評価測光でのデータしかないのでそれを基準に補正値を組むつもりだ。もしかすると中央重点の方が日食向けの自動露出をしてくれるかもしれないが。

EOS 5D MarkIIの黒点(20081229)
既報にあるように5D MarkIIの黒点はファームアップの対応で“軽減”できることになるようだ。
この黒点、先日は高感度で発生すると書いたが、低ISO感度でも発生するようだ。
5D MarkII自体は従来機を上回る低ノイズ性やライブビューなど天文適正は高く、黒点問題さえ何とかなれば2009年の天体写真シーンをリードする存在になりうる。メーカーの善処に期待したい。
とりあえずユーザーがやれることとしては、カメラ本体のオプション設定で「高輝度・階調優先」をOFFにすることだ。これで黒点を軽減できるという。

ところでこの「高輝度・階調優先」のオプションはいったいどんなものだろうか。
CMOSセンサーから読み出したデータはゲインアンプで増幅され、A/Dコンバータでデジタル化される。このとき階調配分をコントロールし、高輝度により多くの階調を割り振るかどうか決めるのが本オプションと思われる。
RAWデータは14bit化されたとはいえ、黒から白までリニア(均等)に階調が割り振られているわけではなく、拡張された上位2bit分はほとんどが高輝度に割り振られている(自分がRAWデータを見た限りでは)。
つまり中間輝度以下の階調数は12bit機と大きな差はないと見ていい。これは、RAPで14bit機のRAWデータでレベル補正をすればわかるが、コントラストのよい画像にするためにはハイライト側をかなり切り詰めなければならない。適正露光の一般写真でもレベル補正なしの状態でも同様なので、ヒストグラムはかなり左に寄っており、リニアな階調特性になっていないのだ。
EOS内蔵の高輝度優先オプションを有効にすると、中間輝度以下の階調を削ってさらに高輝度側に階調を割り振るものと思われるから、基本露出アンダーな天体写真ではこのオプションは“OFF”にしたほうがいい。恒星や銀河の飽和を防ぐため高輝度側を優先したくなるが、中間輝度以下の階調が少なくなり、S/Nが悪くなってしまうからだ。
逆に日食などハイライトの階調を少しでも引き出したいときはONにすべきだろう。


EOS 5D MarkII高感度時の黒点(20081208)
EOS 5D markII/ISO25600/露出15秒/EF70-200mmF4L IS
F4クラスの望遠鏡やカメラレンズならば、15〜20秒程度で適正露光になるので、ノータッチガイド&超多数枚コンポジットでS/Nを稼ぐ方法が使えそうだ。しかし…。
EOS 5D markIIには拡張ISO感度設定があり、ISO12800とISO25600が使えるのが特徴だ。 ISO25600にもなると私がよく行く天城高原では、F4での適正露光時間は15秒程度となる。 これならばオートガイダーは全く不要な露出時間なので、山のように撮影して超多数枚コンポジットでS/Nを稼ぐ戦法を採ってみようとした。

しかし、撮影したデータを見ると輝星の右側が一辺倒に黒く潰れているのに気がついた。


上記画像のベイヤー・イメージ。ハイライトのエッジが黒く落ちるというより、ハイライトエッジの手前で落ちているという感じ。
どうやら飽和しているピクセルの右側が逆に黒落ちしやすくなるらしい。
ただ、これは現像エンジンの問題かもしれないと思い、RAWデータを直接見てみた。それが右図である。

ベイヤー状態で見ても恒星の右側が黒く沈んでいることがわかる。
ちなみに設定は高感度ノイズリダクション=OFFである。
ファームアップでの修正を期待したいところだが、どうだろうなぁ…。
拡張ISO設定はあくまでもオマケであり緊急用でもあるから、完成度の低いところが出てしまうのは仕方がないかもしれない。


ダークノイズの評価(20081016)
基本的にはヒストグラムを表示し、ノイズ評価結果の数値を乗せているだけ。下のグラフは上のグラフのX軸近辺を64倍にズームしたもので、一般的なヒストグラムでは表示できないわずかなノイズの分布もわかる。とりあえずRAP2プレリリース版に実装した。
星ナビ2008年11月号の特集「デジタル一眼レフの冷却改造」では、恒温槽を使ったノイズの本格的な評価を行った。
その上でノイズを定量的に示すためにノイズの評価プログラムを作り、その結果を紙面に掲載した。
このプログラムはフリーソフトとして公開する予定だが、とりあえず(=UIを作るのが面倒(^^;)RAP2プレリリース版に先行実装した。

特集では数値を出力するのみのプログラムで、掲載もグラフのみだったが、ヒストグラムと露出設定を合わせたPNG画像を書き出すようにしてみた。
ヒストグラムにするといろいろ気がつくことがある。よく言われることだが、デジカメはRAWデータといえ、生のデータではないということがわかる。

いわゆるベンチマークの一種なので、この結果でデジカメのノイズ特性が全てわかるわけではない。いろいろな計算式やパラメータを変えて試したところ、本プログラムのやり方が一番見た目のノイズ感にマッチしていただけということである。


冷却デジカメSEO-COOLED 40D(20071019)
先週のしらびそで瀬尾さんから冷却EOS 40Dの試写を託され、今週はなんとか作例を撮ろうと天気予報とにらめっこ。
水曜日の夜にわずかな晴れ間に期待し、富士山新五合に突撃。
天気が安定しないのでNuQにレデューサをつけF3.6で短時間露光勝負。
唯一撮影できたカットが以下のIC1805である。ISO1600、露出5分×2と総露出時間はわずか10分。
冷却化によってノイズは極限まで減少しているため短時間露光でもS/Nのよいデータが得られる。強い画像処理をしても破綻しにくく、淡いIC1805をくっきりと浮かび上がらせた(→拡大画像)。
韓国製の冷却Kissの使い手である山中さんレベルの作品を創るためには、ISO感度を控えめにして露出を長くしなければならないが、短時間露光と少ないコンポジット枚数で、そこそこのクオリティの作品を歩留まりよく撮影できるというメリットもある。
天気が続けば冷却をOFFにして、同露出で撮影し、その結果を比較したかったのだが、それは来月になりそうだ。

ちなみに冷却効果は瀬尾さんのHPによると-25℃とあるが、これは外気に依存する。20℃以上の室内温度だと-25℃の冷却効果が得られるが、氷点下近くまで下がった気温だと-20℃くらいの冷却効果に留まる。

非冷却デジカメは1時間ほど連続露出を行うと、センサー温度は外気温+7〜10℃くらいになる。つまり冷却デジカメとは、露出中の温度平衡状態で、30℃近い差があることになる。
今回、センサー温度が-18℃くらいだったので、非冷却カメラでセンサー温度を同程度にするには気温-25℃以下のところで撮影しなければならないということになる。

さて、このプロトタイプSEO-COOLEDは、趣味人の10/26(金)の満月会でお披露目できるよう、瀬尾さんと店長宮崎と調整中である。興味のある方は秋葉原までいらしていただきたい。


SEO-COOLED 40Dで試写。電源はDC12V。ペルチェのパワーは50〜100%で可変。ライブビューは問題なく利用可能だった。ダストリダクション機能はキャンセルされる。 ISO1600/5分×2枚の作例。とても十分とはいえなく、そのポテンシャルをすべてお見せするには至らなかった。
拡大画像はこちら


Nikon D80インプレッション(20060904)
D80は画面下部の熱カブリがなくなっている。さらに背景濃度の低さは注目に値する D200の同条件ダーク。背景濃度が上がっており、ダイナミックレンジが潰されている。
先頃発売されたニコンD80によるダーク画像を入手したので、ノイズの出方を調べてみた。 ホワイトバランスはなし(RとBのガンマを1.0に設定)、ハイライトを255→64に下げる強いレベル補正をかけた。
同じ1000万画素モデルということもあり、D200と同じ、もしくは近い傾向を示すと思われたが、熱カブリはともかく、背景濃度がかなり違うのには驚いた。
背景濃度があがらないということは、それだけダイナミックレンジが広いということであり、それだけ露出をかけられる。淡い散光星雲を表現するのならば有利な条件だ。
熱カブリは画面上部はD200と同じだが、下部にはほとんど見られない。

RAWデータを覗いてみたところ、ベイヤー配列はD50/70系ともD200とも異なる配列であった。RAPの対応はすでに終わっているが、ちょっとあれこれと改造してしまったため、まだ正式リリースを出せる状況にはなっていない。
D80を購入されたRAPユーザーで、一刻も早く欲しいという方がいたら、フォームより連絡をいただければβ版をお渡しすることができる。

気になる赤外カット改造だが、結論からいうと可能である。しばらくすれば天文ショップによる改造サービスが始まるだろう。

もう一つの雄であるEOS Kiss Digital Xであるが、ダストリダクションがついたせいで改造は難しいかもしれない。これは実機が発売されてから判明するだろう。瀬尾さんがチャレンジすると期待しているので朗報を待ちたい。
もしKissDXの改造が難しいとなった場合、デジカメ天体写真の主役はD80になるかもしれない。

これらの画像は和田光宣氏に提供いただいた。

皆既日食の画像処理(20060405)
第2接触を待ちつつ、部分食を撮影する筆者(と機材)。天候にも恵まれ4分間もの魅惑のショーを楽しめた(@エジプト・サルーム)。
2006年西地中海皆既日食は、星ナビのエジプト・ツアーに参加。当日は明け方こそガスに覆われていたが、日食開始前には雲一つない空となり、気温もぐんぐん上昇、最高の日食日和となった。

現地では、星ナビの別コースに参加していた大平貴之氏ともお会いでき、ためになる話をいろいろ聞くことができた。

帰国後、早速撮影した日食画像をPCで整理してみた。
現地での撮影は小トラブルもあり、完全に予定どおりというわけにはいかなかった。
しかし、なんとかそこそこの画像は得られたので、これを素材に「星ナビ2006年6月号」(5月6日売り)の連載で画像処理方法を解説したいと思っている。
ここでは、適当な数カットをピックアップしてPhotoshopで軽く画像処理をしたものを掲載する。

ちなみに先日のメモでは、“無改造デジカメではHαのプロミネンスは写らない”と書いたが、実際に撮ってみたところ、問題なく(それなりに?)写ることが分かった。同じHαとはいえ、散光星雲とは比べものにならないほど明るいからだろう。
改造デジカメならばもっとハデに赤く写るのだろうが、赤外線の色かぶりが強くなるため、ダイナミックレンジのロスが大きくなりすぎるかもしれない。


第2接触。ダイヤモンドリングの光芒の右にプロミネンスが見える。 皆既中。プロミネンスから外部コロナまでを画像処理にてまとめてみた。まだまだ改善の余地あり。 第3接触。4分間のショーはこの時点で終わる。ダイヤモンドリングのきらめきとともにあたりからは大歓声と拍手が沸き上がった。

ちなみに、皆既日食の写真はそれなりに見せるだけであれば、別段難しくなく、露出はカメラのオートに任せ、画像処理もほとんどいらない。

難しいのはコロナをまんべんなく描写することだ。
コロナの内部と外部の輝度差はハンパではなく大きい。デジカメのダイナミックレンジに収めるのは到底ムリ。
少なくとも現状のデジカメの性能ではワンカットでは無理だと思う(現地点ではS3Proが最も有利であることは疑いがないだろう)。
そこで露出の異なる複数枚の画像を用意し、コンポジットを行い、階調を稼ぐことにする。
しかし、皆既の縁から空に溶け込む外部コロナまで、流れるようなグラデーションを表現するのは、露出も画像処理も難しい。ここが腕の見せどころである。

右は露出を長めにかけ、外部コロナを描出したもの。皆既の縁のまわりは白く飽和し、迫力ある表現となる。
肉眼で見る皆既日食のイメージに近いが、内部コロナとプロミネンスは飽和してしまう。
画像処理をするならば、トーンカーブで低輝度エリアをちょっと持ち上げるようにする。ハイライト(飽和)部は自然にグラデーション部分に繋がるように心がける。
ちなみに右の画像はカメラまかせの絞り優先オートで撮影し、ブラケティングで±2露出を行った3枚のうちの1枚だ。オートでも簡単に綺麗な画像が得られることが分かる。

右の画像は外部コロナ狙いだったが、露出が足りなかった画像だ。
これを画像処理でレベル補正とトーンカーブ補正を行ってみたが、ハイライト部の処理に失敗し、飽和エリアとグラデーション部がなめらかにつながらず、明確な境界線ができてしまった。
過処理による失敗例といえる。
このような露出の過不足に耐久力があるのはやはりRAW形式だ。セーブ時間との兼ね合いでRAWを使うかJPEGを使うかは微妙なところだが、3年後のデジカメはさらに高速になり、“RAWで当たり前”といえる状況になって欲しいものだ。

おまけとして、外部コロナまで飽和するほど露出をかけてみた画像を右に掲載した。
地球照で月面模様が写し出されている。
月が必ず真っ黒でなければならない理由はない。こういうのももちろんアリだと思う。

■メモ
今回用いたFS-60C(F6.3)+EOS KissDN(ISO100)での撮影では、
プロミネンス→1/1000
内部コロナ→1/125
外部コロナ→1/8
このくらいが適正露光のようだった。次回の日食に向けてのメモとして記しておくことにする。

■追加: ローテーショナル・グラディエント法(2006.04.06.)
ステライメージ5のローテーショナル・グラディエント法を使ってみた。
個人的にはコロナを強調しない画像(上の3連の中央画像)が好きなのだが、強調した画像の方が双眼鏡で見たイメージに近いかもしれない。
が、比較すれば近いというだけで、どうがんばっても肉眼で見たイメージにはならなかった。
肉眼で見たコロナの美しいグラデーションは今でも脳裏に焼き付いている。
これだけ輝度差が激しいにも関わらず、ちゃんと見えてしまう肉眼の性能に驚くとともに、やはり皆既日食はお金と時間をかけるだけの価値がある、かけがえのない現象であることを再認識させられる。
う〜ん。4分間じゃ全然見たりない!

コロナ模様は太陽の磁場の影響で発生している。写真をよく見ると、左上と右下に太く長いコロナが、右上と左下に細く短いコロナが無数に出ているのが分かる。
太陽の活動が活発なときはよりコロナは拡がり、ほぼ円形状になることもある。
今回はこれといった黒点も見られなかったし、太陽の活動はおとなしかったようである。

皆既日食を一眼デジで撮る(20050314)

2006年3月末のエジプト・リビア・トルコ皆既日食は、デジタル一眼が本格的に普及し始めてからははじめての日食になる。
直焦点撮影と同じくシステムがコンパクトになるので、気軽に撮影を楽しめるようになったといえる。
ただ撮影できればいいというわけではなく、自分はやはり肉眼で皆既日食のその場の空気を楽しみたい。だから、皆既中にカメラや赤道儀をあれこれ操作するのは避けたい。いや、絶対にやらない。
だからこそ、“リモコンを連打するだけで撮れる”ような準備をしておきたい。

■赤道儀は必須
エジプトに持っていく予定の機材(ケンコー・スカイメモR)。ビデオカメラは、撮影兼ウェイト係。
太陽は日周運動でどんどん動いていく。直焦点撮影のような精密なガイドは不要だが、だからといってカメラ三脚のみでは、マメに構図を合わせ直さなければならず、上の大前提「皆既中に機材は見ない」に反してしまう。
よって、小型軽量でもいいからモーター内蔵の赤道儀は絶対に必要だ。
国外に持っていくのだから、いつもの直焦点用の赤道儀ではなく、小型軽量のポタ赤がベスト。自分は実績のあるケンコースカイメモRをチョイスした。このほか、タカハシのスカイパトロール、ビクセンのGP2ガイドパックなども選択肢になる。

今回のリビア、エジプト、トルコはいずれも日本とほぼ同緯度にあるため、赤道儀は国内用のままでいいだろう。
ただし、長時間露出をしないからといって極軸をいい加減にしておくと、あれよあれよと写野から外れていってしまうだろう。
こまめに写野調整すればどうということはないが、“大前提”を考えればある程度は合わせておきたい。
少なくとも極軸望遠鏡の視野内に北極星を導入するくらいの精度が欲しい。

ツアーのサービスによるが、未明に観測地に出かけて極軸望遠鏡を合わせる機会があるかもしれない。もし夜のうちに合わせる機会があればぜひ活用したい。

関連リンク
 ケンコー スカイメモR
 タカハシ スカイパトロール(TG-SP)
 ビクセン GP2ガイドパック
 BORG片持ちフォーク式赤道儀(※モーターな し)

■撮影鏡筒
試しに太陽を撮影してみた。374mm+EOS Kiss Digital Nではこのくらいの大きさに写る。
35mmフィルムでは、500〜1000mm程度の焦点距離で撮る場合が多いが、デジカメはAPS-Cサイズとひとまわり小さいので、焦点距離は350〜600mmが適当となる。
自分が選んだFS-60C(w/ フラットナー)は374mmなので、ちょっと短めかな、という感じだ。一般的にはこれに2倍テレコンを入れてもいいくらいだろう。
今回は外部コロナの描出が最大の目当てなので短めにしたが、迫力満点の太陽を撮影したければ500mmがよいと思う。BORG77EDあたりはどうだろうか。
300mmのレンズに×2テレコンというのもアリ。

関連リンク
 タカハシ FS-60C
 BORG 77ED


■減光フィルタ
フジのアセテートタイプのNDフィルタ「ND4.0」。光量を1/10000に抑える。それをコッキンのP83ホルダーで挟む。コッキンは海外ブランドだが、ケンコー扱いなので、ヨドバシ等で容易に手に入る。
ペンタ67による星野写真で活躍したコッキンのフィルタホルダー。半円状のツメをフードにそっと引っかけるだけでよい。
P83(83mm)規格がうまい具合にタカハシの6cm屈折用フードにドンピシャに収まるのである。
日食撮影において避けては通れないのが減光だ。
日食は減光して撮影するもの、という感覚があるが、皆既中はノーフィルタで撮影するもの。あたりが真っ暗になり、星まで見えるのだから、いわば夜景撮影に近いものだと考えればよい。

よって、減光が必要なのは部分日食の間だけ。部分日食を撮影するならば、市販のNDフィルタを使うのが一般的だ。
ただし、NDの後ろの数字の意味がメーカーによって異なるので注意。
例えば、ケンコーND400は「露出倍数を400倍にする」という意味だ。
400 = 2n → n = log2400 ≒ 8.64
つまり、約9段階絞ったのと同じ光量になる。
ビデオカメラ用のND4(+2絞り)やND8(+3絞り)もこれと同じ計算だ。

ぶっちゃけ、ND400を1枚だけでは思い切り露出オーバーになるだろう。
一眼デジカメの多くは、ISO100未満の低感度が使えないので、1/4000程度ではシャッタースピードが長すぎる。ND400ならば2枚重ねがちょうどいいくらいだ。

自分はフジのアセテートフィルタ(ぺらぺらのやつ)を使うことにした。「ND4.0」と書くのだが、数字の意味が違ってこちらは「露出倍数を10の4.0乗(=10000)倍にする」ということを示している。
計算(省略)すると、絞りにして約13段階分となり、F8+ISO100+1/4000秒でほぼ適正露出が得られる。

ところで皆既中はノーフィルタで撮影するため、皆既が始まる前になったらフィルタを外さなければならない。望遠鏡内部のアダプターに取り付けるタイプのフィルタだと、望遠鏡をバラさなければならず面倒だ。しかも厚みのあるガラスフィルタであればピントが大幅にずれてしまう。
その点、対物レンズの前に取り付けるフィルタならばピントの移動がないので安心だ。

フィルタの取り付けは、望遠鏡のフードの先端にはフィルタねじが切られているので、これを利用する手もあるが、ドタバタしている皆既直前にゴリゴリねじを回すのはできれば避けたい。
自分は、コッキンのフィルタホルダーを使ってワンタッチで取り外しができるようにした。
単にフードに引っかけてるだけなので、取り外す際に鏡筒に力が加わる心配はない(逆に風が強いと飛んでいってしまうが)。

関連リンク
 ケンコー ND400フィルタ
 フジ アセテートNDフィルタ

■デジカメでの撮影
デジカメによる撮影の問題点は以下のとおり。

(1)バッテリー
(2)データの形式、書き込み速度
(3)ピントあわせ

(1)のバッテリーは最近のモデルはかなり長持ちするので問題ないだろう。ホテルでフル充電しておけば1000枚くらいは楽にこなすはず。

(2)は連写性能に直結する。たとえば秒間5コマという連写能力を持っていたとしても、メモリカードが遅ければその能力は活かせない。
デジカメは、メモリカードよりはるかに高速なバッファ(メモリ)を持っており、数枚ならば溜め込めるようになっている。カタログにある連写能力は特にことわりがない限り、内蔵バッファへの書き込みだと思ってよい。
バッファがいっぱいになるとメモリカードへの書き出しが始まるため、終わるまでは次のシャッターを切れない。
今回は長めとはいえ皆既は3〜4分しかなく、イキオイで連写しまくると肝心のダイヤモンドリングでシャッターが切れないということも起こりうる。
あせらず計画的にシャッターを切るようにしよう。皆既中の露出はオートでよいと思うが、ブラケティングで±2補正のコマも撮っておきたい。内部コロナと外部コロナではかなり輝度差があるからだ。「1回3コマ」と考え、撮影計画を寝る。
データ形式は、強いレベル補正をかけるわけではないので、JPEGでよいと思う。もちろんRAWの方がいいに決まっているが、日食ではデータの書き込み速度を優先したいからだ。

ミラーショックも重要だ。振動でブレることもよくある。ミラーアップ機構があれば積極的に使いたい。
今回使うEOS Kiss Digital Nは、ミラーアップが一応付いており、メニューのFnオプションで指定できる。これは1回目のレリーズがミラーアップ動作で、2回目のレリーズがシャッター動作になるというもの。ミラーアップさせたまま連続撮影できるわけではないので、1回目と2回目のレリーズの間を数秒間空けて、振動が収まる時間を確保する。

(3)ピントは部分日食の段階で、欠け際を使って合わせる。ファインダーは正直アテにならないので、撮影した画像を拡大して追い込む。
皆既数分前になったらピントを合わせ直す。なぜかというと気温が急激に(5℃くらい)下がるため、ピントがずれている可能性があるからだ。

ピント合わせも国内で練習しておきたい(欠け際はないが)。自分は自作ソフトのフライアイルーペCSを使ってPCで合わせる。大きくずれているわけではないので、2、3枚で追い込めると思う。

ちなみに今回はプロミネンスは対象外だ。プロミネンスはHαなので改造デジカメか20Daでないと写らない。


Nikon D50インプレッション(20050630)

Nikon D50はD70の廉価版ともいえるべきモデルで、D70よりひとまわり小さいのが特徴だ。
天体用としては、小型化によりメモリカードがコンパクトフラッシュからSDカードに変更になったことくらいで、基本的には同じものだ。
“D70から機能を削っただけ”という感じであまり気にしていなかったのだが、早速購入された方からRAWデータを頂いたので、RAPに対応させるとともにノイズを検証してみた。

Special Thanks“えす"

D50,ISO800,10分。一見すると分からないくらい熱カブリが減っている。 同条件で撮影したD70のダーク画像。左上の2カ所の熱カブリはおなじみのものだ。

左がD50、右がD70のダークフレームで、どちらもISO800、10分の露出だ。6月末にしては暑い夜で、気温は25〜28度くらい。同時にダーク撮影しているので条件は同じだ。
D70は例のごとく左上に2箇所の明るい熱カブリが見られるが、D50はそれがほとんどない。熱カブリはCCDの性能ではなく、カメラボディ構造や断熱処理をどこまで行うかで決まってくる。D50ではこの点が改良されたようだ。
熱カブリが目立たないとはいえ、天体写真では強いレベル補正やコントラスト補正をかけるのが一般的だ。画像処理前のRAWデータにおける熱カブリを論じてもそれはあまり意味を持たない。
RAPで読み込み、レベル補正を強くかけてみたのが下の図だ。ヒストグラムの範囲は通常の0〜255に対し、0〜48とおよそ5倍まで圧縮してみた。

D50の上の画像にRAWレベルで強くレベル補正をかけてみたもの。熱カブリが無くなったわけではないことがわかるが、ダイナミックレンジはまだ生き残っている。 同じくD70。これだけレベル補正を強くかけると、画像の左上が熱カブリで飽和している。すでにダイナミックレンジは残っていないと思われる。しかも全体的に背景ノイズ(ランダムノイズ)も高くなっている。

D70では左上の熱カブリがほぼ飽和しているが、D50ではほんのり見える程度だ。ダーク減算はもちろん必須だが、ダイナミックレンジをそれほど犠牲にしなくてすむ。
ダーク減算は、確かにダークノイズを消すことができるが、その部分のダイナミックレンジは確実に低下する。

いくらダーク減算で消せるとはいえ、効率よく品質を追求するならばカメラの方向にも気をつけたい。
例えば、私がD70でアンドロメダ銀河を取るときは、必ず図のように構図を取る。焦点距離と対象の大きさではどうしようもない場合もあるが、カメラの向きを間違えると銀河の一部が熱カブリ部分に重なってしまう。
RAPによるダーク減算で取り除くことはできるものの、ダイナミックレンジが減っているため、銀河に割り当てられる階調数が少なくなってしまう。
また、D50は背景ノイズも劇的に少ないことが分かる。というか、D70の背景ノイズが大きいのだ。これは「熱カブリの熱源」が全域に大きく影響しているからだろう。D50ならばコンポジットの枚数を減らすことができるのではないだろうか。
D50は、そういう意味でD70より天体に向いているカメラだ。RAPのD50対応も終わっているので、IRC改造が問題なくできれば価格的に天文屋ヒットモデルになるかもしれない。


ステラナビゲータで事前準備(2005.06.09)

新月期になると遠征に出かける自分だが、数日前から撮影計画を練り始める。こんなときに役に立つのがステラナビゲータのようなシミュレータだ。アストロアーツは、ジョイスティックによる太陽系内飛行や天体の会合などプラネタリウム的な要素をウリとしているが、天体写真の撮影計画に役立つ機能もたくさんある。
そんなわけで自分のステラナビの使い方を紹介してみる。

 天体写真のためのステラナビゲータ

雑感: 20DaとKiss Digital N(2005.03.30)

天体用の20Da、そして天体写真用としては最も広く親しまれているKiss Digitalの後継機Kiss Digital N(Kiss DN)。暖かくなる天文シーズンを前にいろいろ選択肢も増えてきて楽しいところだ。
20Daの特徴は、もちろんHαの透過率を20%から50%程度へと引き上げたこと。具体的な写真の比較は天文各誌に載っているのですでに衆知のことだろう。
もう一つはFUJI S3Proでも採用しているピントスルー表示を採用(キヤノン語では“ライブビュー表示”という)したことだ。天体写真は一般写真に比べてピントが実にシビアだ。はるかかなたの恒星は完全なる点光源となってレンズの性能を丸裸にする。
銀塩写真ではナイフエッジで十分にピントが追い込めた。銀塩フィルムが解像力でCCDに劣っていることもあるが、直接フランジバックを計測できるのが利点だ。デジカメでピントテスターを作りたくても、まさかCCD面に直接ノギスをあてるわけにもいかない。
ファインダの精度もあやしいものがある。ファインダをどんなに拡大してどんなに追い込んだところで、ファインダそのものの精度誤差以下には追い込めない。そもそもAF全盛のこのご時世、コストダウン競争によって最も最初に予算が削られるのがファインダではないだろうか。少なくとも自分は今のAFカメラのファインダ精度を信用していない。

最も確実なのは、実写によるピント合わせであることは疑いのないところだ。20Daのライブビューモードは、天体写真ファンに手軽なピント合わせ方法を提供してくれた。FUJI S3Proでは30秒という制限があったが、20DaはシャッタースピードのひとつとしてBulbのとなりに配置されている。よってリモコンレリーズで開けっ放しにしておけば、ひたすらライブビューで表示化が可能なのだ。
コンパクトデジカメはライブビューがアタリマエ(というか光学ファインダーがない機種も増えてきている)なのに、なぜ一眼デジは特殊な機能なのだろうか。
その理由は熱にある。コンパクトデジカメの1/2〜2/3インチサイズCCDに比べ、それに比べれば大型のAPS-Cを基準とする一眼デジは放熱対策が必要だ。常時CCDがデータを受けていればどんどん熱がたまり、それがダークノイズとなって表面化してくる。これら熱エネルギーの源は全てバッテリなのだから、ライブビュー表示はかなり電気を消耗すると言ってよい。
20Daのライブビュー表示が時間無制限なのは、特殊な用途として購入した天体写真ユーザーの利用方法を信頼しているからなのだろう。

あとは粗末な液晶モニタでどこまで追い込めるかがポイントになる。これは4月発売の天文ガイド本誌でレポートを書いたので参考にしてもらいたい。
結論を先にいうと、自分が10ミクロン単位まで追い込める125SDPで使うなら、ノートPC+フライアイルーペCS(自画自賛?(^^;)の方が上、といったところ。

20DaとKissDNのミラーケラレもいろいろウワサが飛び交っているが、どちらもケラレは存在する。しかし、ケラレの発生は光学系に依存しており、キヤノンのレンズを普通に使っていれば問題ない(ケラレは出ない)。直焦点でもケラレが目立つ望遠鏡とそうでない望遠鏡がある。
20Daは対策が練られたが、全くケラレが無くなったのではなく、低減したと言った方がいいだろう。ケラレが問題になるかどうかは、画像処理をどの程度強くかけるかで決まる。

Kiss DNは、持った感じも旧Kiss Dに比べてひと回り小さく、実にコンパクトにできていると感心する。塗装も旧Kissはプラスチッキーだったが、Kiss DNはマグネシウム調の塗装となり高級感が出た。ただ小型化のため、バッテリも小型化しているので買い換えを考えている人は注意が必要だ。
天体望遠鏡ショップ等による、Kiss DNのIR改造サービスもすでに始まっており、今後はこちらが主流となるだろう。
気になる熱カブリは、旧Kissが右上と右下の二カ所を中心に拡がっていたが、KissD Nでは右下のみとなり、それもかなり低減されている。スポットノイズ(輝点ノイズ)は相変わらず多いものの、熱カブリのみを消すならばダーク減算をサボってもいいのかもしれない。

D70用リモートコントローラ(2005.02.15)
D70に取り付けた誠報社製タイマーリモートコントローラ接続ユニット。 これで撮影中、機材を放置して天文談義に専念できる(!?)
淡い散光星雲を写し出すためには、同じ構図を何枚も撮影し、コンポジットを行う。同じコマを何枚も撮影するならば、タイマーでシャッターコントロールができれば便利だ。というか、一晩中、手動でシャッターの制御をし続けるのはかなり根気がいる作業だ。
例えば、10分間の露出を4枚行うならば、10分ごとにカメラの前に戻ってきて、ストップウォッチを見つつ、シャッターを閉じなければならない。
知人と天文談義に花を咲かせてしまって時間を忘れ、思い切り露出オーバーになった日には目も当てられない。

都合のよいことに多くのユーザーがいるEOS Kiss Digitalには、タイマーで連続撮影ができるコントローラがキヤノン純正で発売されている。正確にはEOS10D/20D用なのだが、コネクタの形状が違うだけで電気信号的にはKiss Digitalにも使える。
三ツ星や誠報社などの天文ショップでは、この純正コントローラを改造して(といってもケーブルを取り替えるだけだが)販売している。Kiss Digitalを天文に使っているユーザーならばまず間違いなく持っているアイテムだ。

一方、Nikon D70も天文ユーザーが多い機種だが、純正品が赤外線リモコンであるため、うまい解決策がなかった。私もD70で撮影するときは、ストップウォッチを片時も離すことができなかった。
そのD70ユーザーに朗報がある。誠報社からD70用TRC(タイマーリモートコントローラ)接続ユニットが発売されたのだ。
Kiss Digital用のキヤノン製リモートコントローラがD70で使えるようになる。具体的には、Kiss Digital用のリモートコントローラから信号を受け取り、それを赤外線発光装置に伝えるしくみ。
ユニットはホットシュー(ストロボ接点)に取り付けるタイプで、ユニットの下部に赤外線発光素子が見える。ニコン純正赤外線リモコンの替わりにシャッターを押してくれるのだ。
早速、1個注文してD70に載せてみた。なかなか良好だ。プラスチック製のケースだが、ここは軽さの方が重要だろう。

ホワイトバランスとは?(2004.12.03)

デジカメのホワイトバランスについて。
ホワイトバランスは「色温度」とも呼ばれ、いわば「白を白く見せるためのカラーバランス」である。
マニュアルでホワイトバランスを取るとき、読んで字の如く“白い紙”でバランスを取る人もいるが、グレーで取るのがベスト。
白は、RGB各色が飽和しているので、本当のバランスはわからない。
たとえば、ある白い物体を撮影して白く写したとしよう。しかし、(R,G,B)=(255,255,255)とは限らない。実際は緑や青が強く(255,280,300)なのかもしれない。255以上は表現できないから、白く見えているにすぎない。
この擬似的な白を白としてホワイトバランスを取ると、中間調でのバランスが崩れてしまう。本来ニュートラルグレーの色が、緑と青の強いグレー(グレーとは言わないのだろうが)になってしまう。

よって、ホワイトバランスはグレー点で取るのがベストなのだ。カメラやソフトによっては「グレーバランス」と呼んでいるものもあり、こちらの方が適切と思われる。

さて、RAW画像を扱う場合、ホワイトバランスが意味を持つのは、撮影時ではなくRAW現像時だ。
RAPを含め、多くの現像ソフトは、ホワイトバランスを自由に変更できるので、撮影時はどのホワイトバランスで撮影しても構わない。
RAWデータそのものには、ホワイトバランスによる違いは全くないからだ。

天体写真の場合、現像時にホワイトバランスを調整することがほとんどだろう。となれば、撮影時は好きなホワイトバランスで何ら構わない。「太陽光」と「白熱電球」で取った画像を織り交ぜてコンポジットしようが、ダークを引こうが何ら問題はない。

雑誌のフォトコンのデータ欄には撮影時のホワイトバランス設定が載っている。応募用紙にそうなっているのだから仕方ないのだが、これは本来いらない項目だ。
JPEGで撮ってそのまま応募するならまだしも、現像時に少しでもホワイトバランスを調整したならば、意味がない情報といえる。
たとえば、「使用メモリカード=ハギワラシスコム製256MB」と書かれていたら、「それは作品には関係ないだろう?」と思うだろう。それと同じだ。

EOS対応RAP開発中(2004.11.06)

開発中の次世代RAP。RAW現像前の段階でこのレベルまで画像処理ができてしまう。
ちなみに元画像はコレ
Nikon D70版のRAPを公開して一ヶ月経った。今はEOS Kiss Digitalにも対応したRAPを作っている。
ダーク減算ソフトというよりRAW現像ソフトになってしまったかもしれない。
ダークの一括作成は内部演算を32bit化することでより高精度になった。ノイズ除去を含め、演算処理のほとんどをC言語で記述し直したので大幅に速度もアップした。
さらにユーザーインターフェースも大幅に変わり、プレビューができるようになった。右を見て頂ければ分かるが、ホワイトバランスの補正に加え、レベル補正も取り入れた。Photoshopでももちろんできることなのだが、RAW現像後に処理するのとRAW現像前に処理するのでは精度が違ってくる。
RAW現像自体は高精度な演算を行ったとしても、出力ファイルのTIFFに保存する時点で整数に丸められてしまう。その後、画像処理でシャドウ部を持ち上げるなどの強調処理を加えていくと、階調が足りなくなってくる。
逆にRAW現像時のコントラスト補正で散光星雲のシャドウ部を引き出すと、恒星などのハイライト部が白くトんでしまう。そしてTIFFに保存すると本来持っていたハイライト部の階調は破棄される。もう取り戻すことはできない。

RAW現像前にシャドウ部を持ち上げつつ、ハイライト部を保護するような機能が欲しい。こうすればRAWデータの持っている階調を余すことなく引き出せる。
開発中のNew RAPにはガンマ補正、レベル補正のほか、ハイライト保護の機能を取り入れた。効果はなかなか良好で、単なるコントラスト補正では白く飽和していた恒星や散光星雲の明るい部分のグラデーションが保持できている。

コントラスト補正のみ行った場合。散光星雲のハイライト部が完全に飽和している。
輝星もハロ部まで飽和し、肥大化している。
コントラストは左のままで、RAPのハイライト保護フィルタを使った画像。IC434周辺の淡い構造はそのままに、ハイライト部の構造も描出できている。
■おしらせ■
11/13(土)に富士山西臼塚駐車場で行われる(株)誠報社のイベントにて、本ソフトのデモンストレーションを行います。ご興味のある方はぜひいらしてください。
なお、フライアイルーペによる一眼デジカメのピント合わせの実践も行います。天気がよければイベント後もそのまま一晩撮影を楽しもうかと思っているので、お茶でも飲みながら語らいませんか?(^^;


IR改造デジカメを斬る(2004.10.22.)

天体写真ファンにとって、デジカメで赤い散光星雲(Hα輝線)が写るかどうかは重要なテーマだ。
銀塩でもHαが写らないフィルムは粒状性がよくても直焦点派には見向きもされなかった。デジカメでも同様で、Hαの感度がなければ面白みが半減してしまう。
“今度のモデルは無改造でもHαが十分写る”みたいな意見を耳にするが本当なのだろうか。
透過させてよいのあればハナから透過させているハズ。
Hαを透過させないのは理由があるからであり、その理由がある限り、決してHαが写るようにはならない

んじゃないだろうか。
そんなギモンもあり、ノーマルデジカメとIR改造を施したデジカメでは、どのように写りが違うのか比較・検討してみることにした。
無改造D70と改造Kiss Digitalを用いて、同じ対象を撮り比べてみたので、ぜひごらんあれ。

 IR改造デジカメvsノーマルデジカメ

デジカメでダークを引く(3)(2004.10.14.)

いくつかの不具合を修正したRAPを公開しました。
すでにお使いの方はダウンロードの上、上書きインストールしてください。

デジカメでダークを引く(2)(2004.10.09.)

デジカメでダークを引く方法については、天文ガイド11月号P220に書かせて頂きました。
その結果作成したソフトウェア「RAP」とデジカメのダーク減算に関する文章を以下に公開しております。
輝点ノイズとアンプノイズが消えるだけでなく、背景も非常になめらかになります。やはり複数枚のダーク画像による効果は絶大です。

 ダークノイズを消去するソフトウェア「RAP - darknoise eraser -」

なお、天ガの記事に校正ミスがあったため、修正箇所をアップしました。こちらもご覧下さい。

 天文ガイド11月号P220「デジカメでダークを引く!」に関する修正


デジカメでダークを引く(2004.08.26.)

CCDのノイズには、大きく分けてランダムノイズとダークノイズがある。
前者は、あるピクセルにおいて毎回同じ量のノイズが発生するのではなく、撮影するたびにその値は変化する。ランダムノイズが多い画像は、シャドウ部を画像処理で持ち上げると、黒いはずなのに赤や緑の点がたくさんでてくる。

主な原因はCCDから読み出すときの読み出しノイズ、そして画像処理回路のアナログ部で受けるノイズだ。
場所の値もランダムなので、複数撮影してコンポジットすることで、ノイズのばらつきはなくなり、S/N比の高いクリアな画像になる。一般にn枚の画像をコンポジットすることで、nだけS/N比が向上する。

後者のダークノイズは、暗電流と呼ばれるCCDチップ上のノイズで、各ピクセルでいつも同じ案配に発生する。そのノイズは、長時間であればあるほど、そして温度が高ければ高いほど大きくなる。
ダークノイズを減らすためには、CCDチップを冷却するのが一番だ。低温であるほどダークノイズは少なくなる。天文用では冷却CCDカメラが一般的なのは、長時間露光時のダークノイズを抑えるためだ。
それでもダークノイズは完全には無くならないので、真っ暗闇を同じ温度、同じ露出時間で撮影した「ダークフレーム」を作り、天体を撮影したデータからダークフレームを引き算する。こうすれば理屈的にはダークノイズはほぼ完全になくなる。
ただし、ダークフレームは、温度別/露出時間別に作らねばならない。

一方、デジカメで冷却システムを持つものはない。一般の撮影ではシャッタースピードが1秒以下ならば、常温でもダークノイズはほとんど発生しないからだ(正確には目立たないほど小さい)。
しかし、天体写真に使うならば長時間露光時のダークノイズは無視できない。では冷却CCDと同じようにダークフレームを撮影して、引き算すればいいじゃないかと思うかもしれないが、そうはいかない。
デジカメのCCDは、赤、青、緑が順番に格子模様に並んでいる。これをベイヤー配列という。人間の被視感度を考慮して緑が多くなっているのが一般的だ。
下図を見て分かるとおり、赤と青のピクセルは周囲に連続する同色はなく、そのさらに周囲に4つあるだけだ。空いている箇所は周辺の色の具合から計算・推測して埋める。これをデモザイク処理という。いわゆる「RAW現像」とはこのデモザイク処理のことである。

現像処理がされたあとだと、ダークフレームを減算してもうまくいかない。
下の写真は、ある箇所の一部を強拡大したもの。左端は現像前のベイヤー配列のデータを自作ソフトで吸い出したものだ。中央の赤がホットピクセルといって、極端に感度が高いCCD素子がポツンと混ざっちゃってる状態。
これがCCDの生データであるベイヤー配列状態。600万のすべてのCCD素子がすべて同じ感度ということはなく、大小はあるものの、バラツキがある。中央の赤の素子がひときわ素子が明るい。これをホットピクセルといい、ダーク減算で消去するのが普通。 左のデータを現像し、同じ場所を見てみた。現像処理によりホットピクセルが中途半端に曖昧になっている。 左と同じ露出条件でダークフレームを撮影し、現像後に拡大してみた。中央のホットピクセルの輝度が左の画像と同じであれば、左の画像から上の画像を引き算することで、ホットピクセルが消えるはず。しかし、どう考えても消えそうには思えない…。ホットピクセルの値は、周辺ピクセルの明るさによって大きく影響するからだ。
そして、中央が対象を撮影したデータ、一番右がダークフレームのデータだ。
中央から右を引けば、ホットピクセルは消えるはずだが、見てのとおり、色のバラツキが全然違っており、キレイに消えそうにはない。これは周囲のピクセルの値によって、そのピクセル現像結果も大きく変わるからだ。

デジカメでダーク減算をするためには、現像前、すなわちベイヤー状態で処理するしかない。D70の内蔵NRはまさにそれをやっているわけだが、問題点が二つある。
・メイン露出時間と同じ長さのダーク撮影が必要なため、実質、撮影時間が2倍になる(=撮影枚数が半減する)。
・ダークフレームが一枚なので、正確な減算することができない。
そこで、RAWデータをベイヤーに展開するソフトを自作し、ベイヤー状態でダーク減算をしてみた(右上)。画面左上にあるアンプノイズ(熱カブリ)もサッと消える。ダークフレームは同じ条件で10枚撮影し、これもベイヤー状態で加算平均を行い、S/Nを引き上げた。
現像後にダーク減算すると、一見きれいに消えるようだが、上に書いたようにホットピクセルは中途半端になるし、アンプノイズもキレイにはなくならない(下図の右端)。 ダーク減算を行わない画像は全体に赤みが帯びていたのがわかる。周囲の熱をうけているんだな、と実感できる。
ノイズリダクションなしで撮影したデータ。すべて同様なガンマ補正をかけてあります 左と同条件のダークフレーム画像 現像後に左の2つを減算しても、正確に消えないことが分かる。左上のアンプノイズ部が妙な色になってしまっている

フィルタによる青ハロ低減効果(2004.06.13.)

紫外線カットフィルタによって、どの程度青ハロが低減できるかテストしてみた。
・Kenko L41 Super PRO WIDE
・marumi neo dynamic L400
一般的なUVカットフィルタは400から350nmに向けてなだらかに落ちていくが、この2つはほとんどシャープカットといえるくらい鋭い落ち方をする。
よって、両者における紫外線カットフィルタ(常用フィルタ)としては最高峰に位置づけられるものだ。
データシートによれば、ケンコーのL41は410nmを境に、マルミのL400は400nmを境に落ちこむ。

Ai-S Nikkor 180mm/F2.8EDを用いた。EDを使っているため、銀塩用レンズの中では青ハロが少ない方だ。APS-Cプラス180mmという画角の面白さ、中古市場で5万以下で手に入るレンズとして天体写真で遊ぶにはちょうどよい。
少ないといえども、実際は下のように恒星が紫っぽくなる。

上段は縮小画像、下段は一部を抜粋し倍率を100%にしたもの(メキシコ付近)。
(F2.8->F4, exp=8min, ISO400)

ノーマル Kenko L41 marumi L400
全体的に紫がかっている。EDレンズとはいえ、デジタル対応でなければこんなもの。 これが一番青ハロが少ない。全体像もシャープな感じになる ノーマルよりはハロは少ないが、Kenko L41と比べると、わずか10nmしかカットオフが違わないとは思えない…。

やっぱりL41で決まりか?
今回はHα領域を撮影したが、M20や惑星状星雲など、対象そのものに青が含まれている場合、どの程度“青み”が減ってしまうのかは気になるところ。
それでも、紫外線カットフィルタの中では最も高いとはいえ、72mmで7000円程度で買える安さ。一枚持っておいてもソンはないと思う。


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